59回PT国試 新出題基準と共通問題

さて第59回作業療法士・理学療法士国家試験から、令和6年版の新出題基準が適用されました。
以前の記事で新出題基準の概要や、旧基準から変更された部分について紹介しましたが、
今回は適用された59回の出題内容をふまえて、実際に登場した新項目の問題などをみていきましょう。

まずは「共通問題」編です.

ポイント 新出題基準について(共通問題編)

  1. 新出題基準で追加された項目に該当する問題は,共通問題100問中の2問
  2. 新規項目ではないが近年フォーカスされているテーマは,59回共通問題で詳細に問われた

具体的な例として59回国試の午前87番の問題を見てみましょう.

 

 

 

 

(第59回理学療法士国家試験 午前87番より)

出題基準の改訂により,旧出題基準で「PT専門問題」に含まれていたものの一部が、
新出題基準で「共通問題」に追加・移動されています。

本問で問われている「AED」も,新たに「共通問題」に記載されるようになった項目の一つです.
問題としての難易度は比較的低いですが,これまでよりも具体的な内容でAEDの基本的な理解は不可欠です.

(なお,共通の出題基準に新しく追加された「フレイル」に関連した問題がもう1問ありましたが(59回午後82番:フレイルの高齢者の特徴),出題内容はこれまでと同様でした)

 

今回の共通問題に関しては,新出題基準を意識したと思われる問題数が少なく(100問中2問のみ),
基本的な知識をおさえておけば対応可能だったと言えます.

とはいえ今後は,近年の医療・リハビリテーションの流れを念頭におきつつ,新出題基準で新たに追加されたテーマにも着目していくとよいでしょう.

 

59回PT国試 新出題基準とPT専門問題

続いて,「PT専門問題」についても見ていきましょう.

ポイント 新出題基準について(PT専門問題編)

  1. 新出題基準で追加された項目に該当する問題は,PT専門問題100問中の8
  2. 共通問題と同様に,近年フォーカスされているテーマは重点的に問われた

PT専門問題の方が出題基準改訂の影響が大きかったと言えますが,それでも数問レベルの影響にとどまっており,合否への影響があったとまでは言えないでしょう.

とはいえ出題されたもののなかで、これまでの国試対策では対応が難しかった問題をいくつか見てみましょう.

▼PT専門問題 午前2番 「情報収集

 

 

 

 

(第59回理学療法士国家試験 午前2番より)

出題基準における「情報収集」というカテゴリでは,新出題基準で
c医学的情報(血液・生化学検査,各種画像検査,手術,服薬)
というように細分化されて記載されるようになりました.

 

本問では,このうち「血液・生化学検査」に関連した問題です.
一つひとつの選択肢は,これまでの国試でも必要な知識であったと言えます.

 

今後,他部門情報に関して急激に難易度が上がることは考えにくいですが,
他部門情報の知識を学習する際に,新出題基準に追加されたこれらの項目が参考になるかもしれません.

つまり,PTとして知っておくべき他部門情報が具体的に示され,
国試対策においては今後の学習の方向性が分かりやすくなったとも言えます.

 

▼PT専門問題 午前50番 「薬理: 有害反応

 

 

(第59回理学療法士国家試験 午前50番より)

 

「I 基礎理学療法学」の「M 薬理」については,新出題基準で新たに追加されたテーマです.
PT専門問題の新出題基準を詳しく見ると,「I  基礎理学療法学」の中の「M 薬理」は以下のように細分化されていますので,
これらが学習する上での目安となりそうです.
(令和6年度 出題基準より)

 

午前50番は,非ステロイド性抗炎症薬の「c 有害反応」に関連した問題です.
共通問題の「II 疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進」の各疾患にそれぞれ薬剤が追加されたことからも,
各疾患の代表的な
薬剤への理解が求められていると言えます.

 

▼PT専門問題 午後45番 「学校保健: 特別支援教育

 

 

(第59回理学療法士国家試験 午後45番より)

特別支援教育」については,今回の出題基準で新たに追加されたテーマです.
本問では特別支援学校の教育環境について問われていますが,これまであまり出題されてこなかったタイプの問題と言えるでしょう.

 

次の問題も,新たに追加されたテーマの出題です.

▼PT専門問題 午後46番 「発達: 早産児

 

 

(第59回理学療法士国家試験 午後46番より)

 

早産児」も,今回の出題基準で新たに追加されたテーマで,低緊張児(早産児やダウン症など)に対する理学療法の優先度について問われています.
新生児のポジショニングについてはここ数年出題されていましたが,新生児リハビリにおける理学療法の役割を問われるのは目新しいです.

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以上のように,これらの設問については

PT専門問題の方が出題基準改訂の影響が大きかったと言えますが,
それでも数問レベルの影響にとどまっており,合否への影響があったとまでは言えないと考えられます.

新出テーマについては,これまでよりは具体性が求められる可能性がありますが,
まずは合格に必要な基本的な問題を対策することを優先しましょう.

(下記に新出テーマの一覧をご紹介します! ご指導の参考にお役立てください.)

 


▼PT専門問題で新しく追加されたテーマ一覧

PT専門問題において,新出題基準で新しく追加されたテーマ以前の記で紹介いたしましたが,改めて一部再掲してみます.
60回国試の参考になれば幸いです。

 

理学療法評価学の「情報収集」の小項目として

  • 血液・生化学検査、各種画像検査手術、服薬) ★59回国試午後46番にて出題

 

栄養関連

  • サルコペニア(虚弱予防),フレイル
  • (食事)摂取基準 など

小児関連

  • 早産児 ★59回国試午後46番にて出題
  • 重症心身障害児
  • 発達性協調運動障害
  • 障害児教育
  • 教育原理
  • 教育心理学
  • 教授方法
  • 小児の理学療法(通所施設、児童発達支援施設等)
  • 特別支援教育 ★59回国試午後45番にて出題

医療機器

  • 医療機器
  • 機器の保守点検
  • 機器の配置

理学療法管理学(見出しの追加)

  • 雇用・年金制度
  • 報酬管理
  • 健康管理
  • 環境管理
  • 理学療法教育の歴史
  • キャリアデザイン
  • 卒後教育
  • 診療報酬

ハラスメント予防

  • 職業倫理
  • 行動規範
  • パワーハラスメント
  • セクシャルハラスメント

複雑な疾患や,長いスパンでのコントロール

  • 重症化予防
  • 多疾患併存

その他

  • Ⅰ.基礎理学療法学
    死生観、看取り、NCMRR、医療統計(過誤)、推奨グレード、NBP
    ※過去に出題あり:自律神経
  • Ⅱ.理学療法管理学
    医療広告ガイドライン、利害衝突、コンフリクトマネジメント、倫理要綱、ジュネーブ宣言、リスボン宣言、患者の自己決定権
  • Ⅲ.理学療法評価学 Ⅳ.理学療法治療学
    誘発電位、磁気刺激法、3次元動作解析、床反力分析、筋緊張、気分(抑うつ、情動、関心(アパシー))、先天性神経筋疾患(先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、筋原線維ミオパチー、先天性筋無力症)、呼吸疾患(肺がん・気胸)のOPE後、大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離)、弁膜疾患(大動脈弁閉鎖不全、三尖弁閉鎖不全)
    ※過去に出題あり:X線、CT、MRI、SPECT、PET、超音波エコー、筋電図、障害物回避、階段昇降、走行、跳躍、先天異常(骨形成不全症)、集中治療(救命救急、集中治療・クリティカルケア、モニタリング、人工呼吸器)
  • Ⅴ.地域理学療法学
    地域医療構想、産業理学療法、スポーツ支援、各期での社会参加支援

Ⅵ.臨床実習
※過去に出題あり:転倒予防、感染予防(標準予防策(手指衛生、咳エチケット等)、マスク、防護服、手袋など、感染区域)